<特別授業>パリをベースに活躍するメイクアップアーティスト・Kanako Yoshidaさん講演会。トップクリエイターの思考法&キャリアの築き方とは?

スクールライフ
東京校
ヘアメイク・美容専攻

バンタンデザイン研究所は、在学中からプロフェッショナルによる指導を受けることができます。
本日のゲストは……「Yoshida Kanakoです、よろしくお願い致します」

パリをベースに活躍するメイクアップアーティスト。
広告、雑誌、エディトリアルなど様々なフィールドで活躍。

集英社「SPUR」2023年5月号では
『世界に羽ばたくメイクアップアーティストの才能 Kanako Yoshidaの頭の中』
という特集6ページが組まれ、2作品を撮りおろすなど、業界でも注目されています。

1 17年のキャリアの原点は、バンタンデザイン研究所大阪校

「2007年にバンタンデザイン研究所大阪校を卒業し、2008年にロンドンへ。
3年弱過ごして、2011年パリに移住し、ヘアスタイリスト/メイクアップアーティスト加茂克也のチームに参加します」

2012年 帰国 
2017年 再度渡英 Lucia Picaのファーストアシスタントを務める
2019年 渡仏
2020年末 独立
2023年1月 ヘアサロンundercurrentオープン

前半の講演会は、スタッフがインタビュアーとなって進行していきます。

―― バンタンデザイン研究所での思い出は?

「クラスがまとまらないのが課題だったので、自らまとめ始めました。
卒展でも、デザイン科とメイク科が組み、リーダーをやりました。
アイデアを出して、やる気がない人をやる気にさせた2年間でしたね。
昇華したいクリエイションがあるときは外部の人と交流したりしていました。
何をしていくかは、結局自分次第です」
卒業後、バンタンデザイン研究所 大阪校で1年間働き
『後輩たちにどれだけ寄り添えるか』を課題に設定し、自分自身に還元したと話します。
「『フリーランスメイクアップアーティスト』という肩書きを背負い、
自分の名前で生きていく前に軸になるものをつくりたかったんです。
ポートフォリオが必要だったので、在校生の撮影に混ざったりしていました。
お金を貯めて、ロンドンに行きました」

2 作品撮り、自己表現することの大切さ

「作品撮りは常に行っています。
メイクアップアーティストは、基本的に誰かが私の名前を出して呼ばれて仕事が発生する、
『クライアントベース』です。呼んでもらえるように、繁忙期以外は自分でも企画して作品撮りをします。
家で撮影できる環境を整えています」

―― 日本と海外の現場の違いはありますか?

「チームで動くのは同じですし、大差はないと私は思っています。
海外のほうが、もう少しカジュアルかも?適当に話しているということではなく、
自分の役割をしっかりと担いつつ必要以上に改まっていないところはあります。
あとは、海外の人はもっと自由なマインドだと思います。
自己表現が強く、自分が惹かれるビジュアルがイメージできていて、
明確に作りたいものがある人が多いのかなと思います。
日本は発表する場が少なく、クリエイションもコンサバティブな傾向だと思います」

―― 20代のときはどんな風に過ごしていましたか?

「20代のとき、30代で『こうなっていたい』というイメージを実現すべく過ごしました。
海外で、ある程度人に見せられる作品をつくって帰ってくるのが目標でした。
海外に行って活躍したいというよりかは、いちばん大変であろう過程を20代で経験したかったです。
ロンドンでは年100回撮影しようと思っていて、週3回のペースでメイクをしていました」

―― 海外での活動について。語学は、日本で勉強したほうがいいですか?

「私が、海外を想定していたのはバンタンデザイン研究所に入るときからです。
高校時代にアメリカに留学していたので、日常会話で困らない程度には話せましたが、
それを表現に活かすには時間がかかりました。
どの国でも、中学校レベルの語学は絶対に必要です。
日本でも、プライベートレッスンを受けたり外国人の友だちをつくったり、
やりようはいくらでもあるんじゃないかな?
私は完璧主義なほうだから、自分が言葉を組み立てられないことがイヤでした。
でも語学力のなさを払拭できる明るさや愛嬌をもっている人もいます」

―― 海外で、かつて仕事をしていたクリエイターの話を聞くことがあります。海外で仕事をするうえで、今と昔で大きく変わっている点は?着実に駒を進めていくためにはどうしたらいいでしょうか?

「今と昔と、体感としてはそんなに変化はないです。
昔と今との違いというよりは、まずはなんで海外に行きたいのかを考えてみて。
チャレンジしたいのはいいことなので、瞬発的な衝動、気持ちは大事にしてほしい。
私自身も大阪で過ごしていたので東京に行くというキャリアも、考えなくはなかったです。
誰かについて独立してという流れが見えていますよね。
だけど自分の性格や向かいたい方向、世の中がどう動いているか、
どういうステップを踏むのがいいのかを考えました。
私の場合は、海外に行くことに意味があり、
東京でうまくやるためにも海外で経験を積みたかったという感じです。
私から伝えられることは、どういう人になりたいか、どういう人生を送りたいか、
漠然とでも掲げられるようになるといいんじゃないか?と思います」

3 メイクアップアーティストに求められることとは?自分がしたい表現を叶える方法は?

―― メイクの技術力は、どのように上げたらいいでしょうか。

「私は、練習が全然好きじゃなくて。
思い描いているイメージを絶対的に似合わない人にするのがイヤでした。
練習は、ほぼしてこなかったですね。頭の中で何を想像できるかだと思います。
例えば、個人的には今流行りの艶メイクは好きじゃないけれど、私の艶は好きだと言ってくださる人もいます。
ある要素が素敵だなと思うとき、
要素についてもっとカッコよく仕上げられるように毎日ずっと考えているんです。
自分が可愛いと思わないものも可愛くするのが仕事です。
あとは、人が言葉で伝えてくれる“なんとなくのイメージ”を相手がわかるように出してあげることも仕事。
自分がしたい表現にたどり着くために、
コスメを見る、ファッションを見る、人に会うこともインスピレーション。
自分が想像しえること以外に辿りつくためには、他人のアイデアが必要だったりもします」

4 メンバーのメイクチェック。進路のこと、技術のこと、真摯にアドバイス>―― 人生プランがすごく組み立てられている印象です。

「ヘアのパートナーとサロンを開きましたが、
サロンをオープンすることはプランに入っていなかったです。
2023年1月にundercurrentをオープンしたのは自己表現ツールでもあります。
メイクを辞める気はないのですが、メイクだけで一生暮らしたいわけでもなく。
その先を見出せるツールでもあります。
11月限定で、一般の人にメイクを施術することも具現化できました。
自分のキャリアをクレジットベースで作りあげていかなきゃいけなのは、なかなかに孤独です。
カッコいいものをつくっても、見向きもされないこともあります。
アシスタントであれば、その人のもとで働くと、その人のクリエイションで生きていかなければなりません。
なので、私自身もルチア・ピカ(*1)ファーストアシスタントは孤独な部分、しんどい部分もありました。
でも、精神的にバランスが似ている人でないと相談できないこともあります。
見ているビジョンが違えば、話の観点が変わってきます。
そういった過程を共有できる場所が物理的にあればいいと思いました。
精神的に起こるわだかまりなどを一緒に軽減できればいいという想いです。
スタッフのキャリアが伸びたらいいですし、長い目で見たときに仕事の不安はずっとついてくると思いますが、
働ける環境を整えることで、子どもを生みやすいかもしれません。
なので、30代中盤はコミュニティを作りたいと思います」

ルチア・ピカ*1 ……15年から6年「CHANEL」のクリエイティブメイクアップ&カラーデザイナーを務めたメイクアップアーティスト

講演会後は、メンバーのメイクスキル&作品をチェックし、フィードバックする時間へ。

参加していたメンバーは、
「東京コレクションのときに、Kanakoさんのアシスタントに就かせていただきました。
今日はピグメントを使ったメイクにチャレンジしようと思っています。
テーマは『欲望』です。
Kanakoさんに見ていただけるのは緊張します!」と話しますが……
実際はとてもリラックスしたムード。

後輩メンバーから質問をされると、メイクのこと、キャリアの相談に、
一つひとつ熱心に真摯にアドバイスしてくださいました。

在学中から、業界をリードするトップクリエイターの思考を知り、
卓越した技術を教えてもらうことも、バンタンデザイン研究所が大切にしているポリシーです。

【Kanako Yoshida】

 @canakoxx

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